言葉

日常のひと休みに

付喪神㊻

 僕は弱いから進めなくて進むのが怖くて、外の時間を無視して、自分の中の時を止めたんだ。

 僕は自分の中に逃げたのかもしれない。それが悪いことだとはおもわないけど、僕がそれを望んだわけではない。

 

 僕は彼女に好きとしか言っていない。好きと言えない人間が好きとしか言えなかった人。

 矛盾のかたまりのような自分、他人の矛盾は見えるのに自分の矛盾は見えない。

 

 車の中で見た花火に彼女が言った言葉。いつか、この花火をおもいだす時がきっとある。僕は、その言葉の意味も、彼女が流す涙のわけも、その時の僕は何もわからなかったんだ。僕は彼女のことを何も知らない。