言葉

日常のひと休みに

付喪神㊹

 時間は一方向にしか流れていないのに、何故か人の中には別の時間も存在しているような気がしてならない。

 自分の中にあるものは自分の年齢とは関係なくその日のままそこにあり、自分をその日にかえす。

 時間は流れているのに自分の中の時は逆行できるのかもしれない。

 そんなことを言うとひどく変な話に聞こえるかもしれないが、これは特別なことではなく誰にでもあることのようにおもえてならない。たぶん当たり前すぎて見えないもの、空気のように…。

 今こうして彼女のことをおもっていると、彼女はその時のままそこにいる。時間の流れの中では間違いなく僕も彼女も歳をとっているはずなのに…。