言葉

日常のひと休みに

付喪神㊵

 彼女はセンスのある人だった。センスというのを言葉にするのは難しい。彼女の描くもの、言葉…、彼女から生まれてくる様々なものが、そう感じさせた。

 彼女はセンスのない僕と、どうして一緒にいてくれたのかはわからない。

 僕はきっと彼女からたくさんのものをもらっていた。でも、僕は彼女に何もかえすことができなかった。なぜなら僕は僕の心だけで僕を満たしてしまっていたから。僕は彼女が好きだった。いや正確には彼女が好きだと言う方が正しいのかもしれない。自分のおもいだけで自分を満たしてしまうと、相手を見ることができなくなってしまう。それは相手を理解するとか、わかるとかいう話ではない。ただ、見ることすらできなくなるのだ。