言葉

日常のひと休みに

付喪神㉟

 なんてのはどうだろう。

 もちろん彼女は僕とはまったく違った人生を歩んで来たのは当然のことだ。誰だって誰かと同じ人生なんて歩めないのだから…。

 ただ、それほどの恋なら彼女との出会いはよく覚えているはずなのに、正直、彼女との出会いはよく覚えていない…、彼女と過ごした日々は覚えているのに…。それは一目惚れとかではなく浸透するように好きになった恋だったからなのかもしれない。

 人は覚えておきたいものを覚えておけない時もある、それが人だ。

 ただ、そのぬくもりは覚えているのだ。