言葉

日常のひと休みに

付喪神㊺

 僕は何が書きたいのだろう。君と出会って、書きたいとおもって、彼女のことを思い出して…。

 彼女と初めて手をつないだのは、寒い日ではなかった。なぜだろう、ふと手をつなぎ歩きたくなったのだ。手をつないで歩いたあの橋を忘れられないでいる。

 きっと多くの人もたくさんそういう経験をして、自分の中に新しい様々なものが生まれてくるのだとおもう。そしてそれがいつか外の世界から失われて行くことに気づかずに、失われてしまった大きさに、失われたということだけに目を向けて、僕のようにただそこに立ちつくしてしまう。いや、他の人は僕よりずっと強いから、きっと平気な顔して前へ進んでいる。