言葉

日常のひと休みに

付喪神㊼

 それからずっと目を向けられないでいた彼女に目を向けると、彼女を失ってしまったのかと…。

 今にしておもえば、あの時すでに何が始まって…いや、変わっていたのかもしれない。

 現実の時間の中ではもう会えないかもしれない彼女、そのことが本当の意味での失うということになるのだろうか。

 失うというのは自分のものみたいで少し意味が違うのかもしれない。失うというのは所有していたという意味ではなく、きっと自分の心を向けるべき相手をなのだとおもう。その心は、その人に対してだけのものだ。その相手は自分の中にいる。

 もしかしたら、それが止まった時なのかもしれない。そして、その時は止まったままでいいのかもしれない。別の時を動かせば、それでいいのではないかと、今はなんとなくおもうんだ。