言葉

日常のひと休みに

台風一過

 自然の中で生まれたものは自然に消えてゆく

でも、また生まれてくる、そのくり返し

 特別なものは、数が増えれば特別でなくなる

日常になる

日常とは当たり前になること

あるものを受け入れたとき、日常になる

 

 あの人が嫌いだった。ううん、正確には嫌いになった。そう思っていた…。

 仕事で、上司の話を聞いていても、ふと思ってしまう。この人はどうして心にもないことを言っているのだろうと。少し前までは、同じ話を聞いてもそんなこと思わなかったのに。

 なんでか、この会話が意味のないものに思えてしまう。

 何もかわらない…。

 自己顕示欲、自己満足、承認欲求、でもきっとこの人はそんなこと思ってない。本人は思ってないけど、現実にはそうなってしまう。でも、この人は気づかないんだろうな…。どうして私は気づいちゃったんだろう。

 そう思っても、私は

「はい、わかりました。」

って行儀の良い返事をする。目の前のこの人は、それで少し満足するから。

 具体的な指示はしないもんね。結局、なんとなくやれってことでしょ。上手くいけばあなたの手柄で、失敗すれば私の責任。ただ、この人のいいところは、その責任を誰の責任にもしないとこ。じゃあ、誰がその責任をとるの?って思うけど、誰もとらない、いつの間にかなかったことになるだけ、それでいいのかなとは思うけど、失敗の責任が、私の責任になるのもほんの一瞬になるから。

 ここの人達は誰も責任をとらない。ある意味それで成り立つのも凄いと思うけど、いつも地に足がついてなくて、宙ぶらりん。ブランコこいでるみたい、笑える。けど、それがこの人達の日常。

 あれ?どうして私、いつから私、こんなこと考えるようになったのだろう。

 あっ、これはあの人のせいだ。こんなことに気づかなければ、私はこの人達と同じ日常をおくれたのに…。私はここにいるけど、どこかここにいない。

 だから、あの人が嫌いなんだ。私に別の世界を見せた人。

 これが私の日常になってしまったら、この人達とは別の日常。あの人から逃げて取り戻した日常だけど、結局台風が通り過ぎたみたいに傷あとをのこした。穏やかな日常だけど、本当は私が合わせていただけの日常、嫌いじゃないけど、私らしいとは言えない日常。あの人がいなくなってから気づいた日常。私がほしかった日常はどっちなんだろう。

 そんなふうに、いつの間にかあの人を気にしてしまっている…そんな私も嫌い。だから、あの人も嫌い。

 …あの人と話したい…。