言葉

日常のひと休みに

あの日の空~朝やけ~

 あの日の朝焼けは、とても美しかった。

久しぶりに見た朝焼け、秋の夕暮れも美しいが、あの日の朝焼けはそれ以上だった。

 まるで、あなたの美しさが、そのまま空に映し出されたように…

 

 あの日、何か心に決めたあなたの顔は、いつもの可愛らしい笑顔とはちがい、美しかった。

 きっと私ひとりの心だけでは映しきれないその美しさを、あの日の空が映し出してくれたのだろう…

 くるくる変わるあなたの表情に、なぜかあなたの本心を見たように錯覚した。…そうであったらと、願ったのかもしれない。

 本当の美しさにつくりものは決して優らない。

 そのままのあなたが笑うとき、

 そのままのあなたの凛とした姿、

 そのままのあなたが一番美しい。

きっとそれは、誰もが大自然の中に見る美しさと同じように、誰かを感動させる。

 

 多くの芸術家がそうしたように、私もそれを伝えたくて、何かで表現しようと努める…

そして、その美しさには遠くおよばないことを知る。それでも、そうせずにはいられない。

 そうしてつくったものが、その美しさに遠くおよばないと確信しながらも、その美しさが伝われば、と願わずにはいられない。それがその美しさの、ほんのかすかな残り香のようなものであったとしても。

 

 その美しさを失わぬように…

 

 優しく強い愛に育まれたあなたと、美しいときを過ごせることは、世界の秘境にある美しさに出会えたような喜びを感じる。

 

 楽しいと感じるときの流れははやく

 その美しさにときの流れを忘れてしまう。

 

 こうして刻まれたときとあなたの姿は、私の中で多くの大切なものを育んでくれるのだろう。

 再び出会うそのときに、この受けとった素晴らしいものを、少しでも返すことができるだろうか。

 私は、そういう人になれているだろうか…

また、美しい空を見られるような…

 

 



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