言葉

日常のひと休みに

簡単という罠

何でも簡単にする。

誰でもできるようにする。

何だかいい響だ。

簡単になれば、あまり考えずにすぐできる。

誰にでもできるようになれば

キャリアや年齢なんて関係ない。

とても魅力的な話だ。

 

しまった!失言だった。

後の祭り…その失言は世界に拡散された。

しかし、

それに対する謝罪は拡散されなかった。

 

しまった!失言だった。

恋人と別れ話をしてしまった。

その件は誤解だったのに。

あと5分、あと5回、

考えてから伝えればよかった。

積み重ねた時間は

ボタン1つで崩れてしまった…。

 

よかった!簡単に別れられた。

ボタン1つで簡単に別れられた。

さじ加減1つで連絡手段を切れる。

なんて素敵な機能、

バッグみたいに、靴みたいに、洋服みたいに、

飽きたら売って新しいものにかえられる、

それもボタン1つで。

便利で簡単な世の中って最高。

 

考えるのってめんどくさい。

考えないでやっても、

失敗したら消しちゃえばいいし、

ボタン1つで

なかったことにしちゃえばいいや。

だって、世の中この箱の中の世界なんだから。

ホントの人なんて存在しないから、

誰も傷つかないし、なんでもない。

その時の気分で生きられるって最高。

簡単な世の中って最高。

考えて何かするなんてバカバカしい。

それに簡単な世の中は流れがはやいから、

簡単にみんな忘れて、

なかったことになるから、

考えてたら乗り遅れちゃう

考えてる時間がもったいない。

 

 

この言葉は大丈夫だろうか、

この言葉は私の本心だろうか、

この言葉であの人はどう思うだろう、

この言葉で私の気持ちは届くだろうか、

こんな下手な字で嫌われないだろうか、

あの人はこんなに

素敵できれいな文字なのに。

あれは、あの人の本心だったのだろうか、

あの時は怒りを感じたけど

今は、それほどでもない、

それどころか、あの人の本心を知りたい。

考えてもあの人の本心はわからないけど、

私があの人をどれほど大切に思っているかは

わかった…気づいてしまった。

それに比べたら、

私のあの時の感情なんて

大した問題ではなかった。

一時の感情で、一時の感情を

言葉にしなくてよかった。

私は今書いている文字を

何度も読みかえした。