言葉

日常のひと休みに

付喪神68

 誰かに話すわけでもない。でも、主君は誰かのために始めた。誰かの何かになればと書き始めたのだ。

 今、誰かに届くことがなくても、外に出さなければ誰かのところへ届くことはない。まるで海の漂流物のようなものかもしれないが、その中には必要な人に届いてほしいという願いがある。

 どんなことを書いている時であっても、主君の願いはオイラに伝わってきた。主君はバカだから、自分のためのことを外に出すのがとてもヘタクソだ。

 どんなことをしても100%自分のことをゼロにすることはできないだろう。でも、その100%全てが自分のことだけになることは決してないと主君のかわりにオイラが言おう。主君は必ず自分以外の誰かをおもって書いているのだ。

 強い風の音を聞きながら、主君は今日も書いている。