言葉

日常のひと休みに

付喪神㉔

 主君の心が指先を通じて伝わってくる。これは理屈ではない。そう感じてしまうのだ。そういうことに理由なんていらない。

 主君のちからの入り方が変わるからとか、書くスピードが変わるからとか、主君の手の温度が変わるからとか、そういうことは後からつけた理由だ。

 理由なんてものが生まれる前に、伝わるものは伝わる、結果が出てしまうのだ。

 それが、オイラと主君の関係だ。

 そこに理由なんてない、必要ないことなのだ。だって、誰かに説明するようなことではないし、そうする必要なんてないからだ。

 オイラは主君の心を通して、人の心を知った。