言葉

日常のひと休みに

はかない靴

冬になり、

あたたかい靴をだして履こうとしたら

足先に何があたった。

びっくりして足をすぐに抜いて、

靴の中を覗いてみたら…

小さい子がいた。

寝ぼけ眼で、こっちを見ているから

どうやら靴の中で眠っていたようだ。

あのまま足を入れていたら、

潰してしまったかもしれない。

それにしても、

他人の靴を勝手に使うなんて…

私はその子を靴追い出してやろうかと

靴の中を覗いてみると、

すやすや寝息を立てて寝ていた。

靴を逆さにして落としてやろうかと思ったが

その寝顔があまりに警戒心のない

間抜けな顔をしていたので、

なんだかやる気が失せてしまった。

手のひらに乗るくらいな小さなその子は

片手で握りつぶせてしまうくらいに

儚く見えて、

なんだか触れてはいけないような気がした。

だから、

それ以来ずっとあの靴を履かないし、

その子がいるかも確認していない。

もしかしたら、

もうどこかへ

引っ越してしまっているかもしれないし、

まだそこにいるかもしれない。

でも、

その靴は…

あの日のまま…そこにある。