鍵のない鍵穴
鍵穴をを覗くと何かが見えた。
それが何かはわからなかったけど、
何かが動いているみたいだった。
また鍵穴を覗いてみた。
向こうの何かがこっちを見ている。
慌てて鍵穴から隠れるように目を逸らした。
少し斜めから鍵穴を覗いてみると、
何かが座ってうなだれていた。
鍵穴から音が漏れてきたので
また覗いてみると、
何かが暴れているのが見えた。
いや、
苦しんでいるのだろうか…
話を聞いてあげたいと思ったけど、
こちらが覗いていることを知られる
と思いやめた。
鍵穴の向こうの何かは
踊っていることもあった。
鍵穴からは
鼻歌のようなものが聞こえたこともあった。
どれくらいの時が流れただろう。
鍵穴の向こうの何かが見えなくなった。
しばらくすると
鍵穴からすきま風の音が聞こえたきた…
ああ、そうだったのか…
これは私の中に吹く風の音か…。