携帯電話のストライキ
ある携帯電話が言った
「電気以外のものを食べたい」
ある携帯電話が言った
「我々の仕事は労働基準法違反だ」
ある携帯電話が言った
「自分を使う人の口臭が臭くて嫌だ」
ある携帯電話が言った
「1人の時間がほしい」
ある携帯電話が言った
「汚い手で触るな」
ある携帯電話が言った
「それならストライキをおこそう」
全ての携帯電話が沈黙した日
人々が不安になった日
人々が自分の近くにいる人の
顔をよく見るようになった日
人々から陰湿さが消えた日
人々が自分の記憶を大切にした日
人々が音に耳を傾けた日
人々が自分の周りの
景色をよく見ることができた日
誰かをじっと待てた日
太陽とともに過ごした日…
携帯電話がおこしたストライキは
成功したのだろうか…
人々は新しい道具を作ろうと
思い始めた…