言葉

日常のひと休みに

恋文販売機

夏は冷たい

冬は温かい

春と秋は冷たいのと温かいの半分半分

 

いつも通る通学路にある公園のところに

自動販売機が1つ置かれた。

見かけたことのない自動販売機。

その自動販売機には…

お金を入れるところがない。

だから、もちろんお釣りもでない。

あるのはタッチパネルだけ。

書かれているのは、

『手をかざしてください』

という文字だけ。

 

気になってみんなで手をかざしてみたけど、

何も出てこなかった。

何もでない自動販売機、

お金を入れないから出てこないのは当たり前。

いつの間にか、

誰も気にしなくなった…

 

それからしばらくして、

この道を通学路として通るのも最後になった。

最後の記念にと

自動販売機に手をかざしてみた。

すると、ストンと手紙が出てきた。

びっくりして辺りを見回したけど、

誰もいなかった。

恐る恐る、その手紙を開いてみると…

それはラブレターだった。

好きな人からのラブレター。

 

大人になって

懐かしくて、

あの通学路の自動販売機を探した。

だいぶくたびれていたけど、

まだあの公園にあった。

ふと、手をかざしてみた。

すると、また手紙が出てきた。

好きな人からの別れの手紙だった…