言葉

日常のひと休みに

いつもの風景

少し前までは

個人の病院はお年寄りの集会所

みたいなこともあって…

 

病院の待合室の会話なんてのは…

「そういえば、

田中さん今日は見かけないね…。」

「田中さんね、そういえば、

風邪をひいたとかで、今日は病院に行けない、

とか言ってたよ。」

「そうかい、じゃあ元気になったら、

また、会えるかね。」

「元気になったら、また病院通いができる、

て言ってたから…、次は来るんじゃないかね。」

「そうかい。」

 

「山田さ〜ん」

「おっと、お呼びがかかった。

ちょっと先生の顔を見てくるか…。」

 

診察室

「山田さん、どうですか?」

「どうですかって先生、元気じゃなかったら

ここには来られないよ。アハハハ。」

「じゃあ、

いつもの血圧のお薬出しておきますね。」

 

待合室

「あれ?久しぶりですね、山田さん。」

「おっ!久しぶりだね、

利夫さん、元気かい?」

「おかげさまで、元気ですよ。

山田さんは?」

「見ての通りだよ。元気じゃなかったら、

病院には来られないですからね。」

「山田さん、

病院は病気の人がくるところですよ。」

「そうだった、そうだった、

そりゃあ、利夫さんの言うとおりだ、

アハハハ。」

「でもね、山田さんに利夫さん、

あたしなんてね、

あたしが病院に来てるのに、

先生なんて、やれ、旦那は元気かだの、

子供は風邪ひいてないかなだの、

あたしが来てるんだってのに、

あたしの話なんかしないんだからねぇ…

まったく、笑っちゃうよね、あははは。」

「高橋さん、そりゃあ、

あんたが元気で、大丈夫だってことだよ、

アハハハ。

みんな元気で何よりだ。」

「確かに、山田さんの言う通りだ。

じゃあ、あたしはこれで帰りますよ。

皆さん、風邪ひかないように、良いお年を…

じゃあ、また来年ね。」

「おう、高橋さんも、風邪ひかないように、

良いお年を。」

「良いお年を。」