聖君
昔、民の間で病がはやった時に、
国庫を開き米を分け与えた君主がいたらしい…
民は喜んだらしいが、
よくわからない子供が言ったそうだ。
『みんなが困って税を収められない時に
変わらず、税をとっているのに、
その君主は偉いの?』
さらに、青年が言ったそうだ。
『税が収められない民がいて、
税の収入が減っているのに、
君主につかえる者だけが、
どうしてこれまでと同じ俸禄がもらえるの?
ないものを増やすなんて
まるで錬金術みたいだ。
それなら民にもその錬金術で
もっと分け与えてくれたらいいのに…』
それを聞いていた大人達は思った。
この子達に何も起こらなければいいと…
しかし、
数日後
子供はこう言っていた。
「君主は君主というだけで偉いんだ」
そして、
青年の方はまるで錬金術の逆のように
姿を消した。
それからというもの大人達は
ただひたすらに
病がなくなることを祈りながら
日々を過ごしたそうだ。
後に経済学者はこうつぶやいた。
『収入が少なくなれば、
給与も少なくなるだろうに…
それがあてはまらない
治外法権な場所があるのだろう』と…。